番外編「三省堂新現代川柳必携」(田口麦彦編)
会員掲載作品
 この秋発刊の「三省堂新現代川柳必携」(田口麦彦編)から会員の作品を一部ご紹介します。

たましいがしぐれの傘を出ていった 鮎貝 竹生
古書店に居座る冬の蝶図鑑 新井 笑葉
風よけにする一冊の文庫本 伊藤 寿子
祈ること数多(あまた)この世もまた銀河 岩崎眞里子
草を抜く指より蝶が星が翔ぶ 大谷晋一郎
 
わが胸のさくらが散ってより山河 岡田 俊介
いま少し古書店めぐり雪に濡れ 桑野 晶子
口紅が三色午後を塗りつぶす 古俣 麻子
花一輪今年も咲きました あなた 西郷かの女
蔦枯れてよるべなき身の夜の檸檬 西条 眞紀
 
かくれんぼこんなに遠く来てしまい 酒谷 愛郷
ひび割れの畑に息絶えて空缶 佐藤 純一
闘病の友の便りや春の雨 柴崎 昭雄
聖夜なり 愛しき日々を樹に吊す 杉山 夕祈
KobeBlue褪せた瞳ゆるり染めてゆく 月野しずく
 
象がきて象のかたちに夜がきて 寺田 靖
廃番のクレヨンで描く月の舟 西田 雅子
何彫って山を越えたか山頭火 板東 弘子
ふたたび子は二千マイルの風を行く 姫乃 彩愛
介護士が笑えば笑うおじぎ草 福井 陽雪
 
一人抜けふたり抜けゆく吊りびな 福田 文音
さてここに逃走論がよみがえり 古谷 恭一
げんまんの間に雪嵩倍になる 細川 不凍
開幕ベル鳴る華やぎの地平線 松井 文子
工房にのこる蛍の息づかい 松田ていこ
 
路地裏に革命がありアート展 みとせりつ子
空色になってあなたに逢いにゆく 元永 宣子
果実酒を浴びるみたいに 七月の雨 山崎夫美子
リラ咲けば海峡を書くペンの飢え 山内 洋
段差あり吾発つ汽車と桜餅 矢本 大雪
 
芽吹くものみんな味方にして歩く 吉田 州花
吹雪かれてバスを待つ眼の寒立馬 吉見 恵子
2014.9.11


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