琳琅 No.169 2021年7月号より①
その角を曲がれば銀河製作所岩崎眞里子
 子供の頃の一時期、街角に来ると決ってワクワク、ドキドキした。角を曲った途端、見知らぬ何かと出遭う気がしたからだ。そんな洟垂れ小僧の自分を憶い出させてくれたのが掲出句。造語の「銀河製作所」が宇宙好きの僕の心にフィットしたのだ。銀河ばかりでなく、銀河鉄道や宇宙戦艦ヤマトもこの製作所が拵えたのではないか、と想像は膨らむ。メルヘン的な説話を想わせる彼女の不可思議な世界は、私達に一条の光(夢)を与えてくれる〈細川不凍〉
雨傘はモネの水蓮雨を待つ吉田 州花
 「モネの水蓮」がプリントされた雨傘を持っているようだ。とても華やかである。この雨傘であれば、今後やって来る梅雨もどこ吹く風、何と楽しいことだろう。雨の日が待ち遠しそうな浮き浮き感が伝わってくる。〈吉見恵子〉
白水仙 あの日おさなき児を捨ててみとせりつ子
その児は育ち深いえにしと諭されるみとせりつ子
 一句目よりドラマ性のある句連。悲哀を伴う内容だがえにしという人間の温情がある。少し以前の時代の、厳しい話ではない。現代の話。どうか幸福に育ってと願うが現実を正面から捉えてと作者の叫びを感じる。〈伊藤寿子〉
行間に足を取られてから迷子野邊富優葉
雨の寺ふらりと訪えば花卍大谷晉一郎
病院を出て日常はミモザの黄岡田 俊介
指切りの指から青い青い海山下 華子
生かされて生きる レモンの木を植える杉山 夕祈
水芭蕉 列はかげろうの巡礼伊藤 寿子
花を摘むように涙を摘んだかな姫乃 彩愛
足裏のバネが欲して密になる福田 文音
掛け軸の梅は作法を知っている岩渕比呂子
降り止まぬ雨には雨の理由(わけ)があり伊藤 礼子
一人あけベンチに未知の人の来て越智ひろ子
2021.7.10

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