琳琅 No.171 2021年11月号より②
沼あれば沼に呼吸を合わせる時雨細川 不凍
 「沼あれば」に、福井爽人『紫の雨―福井爽人の世界』を開いていた。「沼に呼吸を合わせる」「時雨」このフレーズには感銘の鳥肌が立つ。発想が凄い。不凍作品の時雨は、紫と想う。沼に合わせる呼吸のタイミングもまた絶妙である。今日は、一日中、紫の時雨に浸っていよう。〈澤野優美子〉
こんなにも青があるのに枯れている中嶋ひろむ
 「成熟するにつれて人はますます若くなる」とは、ヘルマン・ヘッセの言葉である。しかし、「全ての人に当てはまるとは言えない」とも言っている。この句は、「青」をどう解釈するかによって句意が変わってくる。例えば、作者は滋賀「よみうり文芸」選者や川柳サークル講師など幅広く活躍されている。しかし精神的には気力に満ち溢れているというのに、高齢に伴う体力低下など自然現象には時々ままならぬ思いを感じ、「枯れている」と率直に表現したのかも知れない。どこか本人の歯がゆい思いが伝わってくるようだ。〈吉見恵子〉
群像を抜け出し傘をひらかなきゃ河野 潤々 
 大樹のような一つの集団を抜け出し、自分らしく歩いて行こうとしている。そのためには、取り敢えず「傘をひらかなきゃ」と思っている。自分で自分を守るということから始めるべきと、自身を鼓舞している。〈吉見恵子〉
蒼天のブランコ漕いで漕いで 涙佐々木彩乃
月の品格九月の窓の斜の位置伊藤 寿子
敗北の中でわたしを値踏みする松村 華菜
愛は千年橋のない川渡りゆく姫野 彩愛
春秋待って削られていくいのち谷沢けい子
歳月のカオスにとける一行詩杉山 夕祈
展望に時をほどいて祖父の鍬富永 恵子
遠花火この世のことはこの世にて望月 幸子
許す気の握手に変わる月明かり山下 華子
炎天のオセロのごとく梅返す吉見 恵子
哭くまえの林檎を剥いで夜の更ける立花 末美
2021.12.13

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