琳琅 No.178 2023年1月号より②
いつだって道の半ばに月がいる岩崎眞里子
 鼻唄まじりに生まれたようなリズミカルな句。力みがないから、作者の体温が直に伝わってくる感じだ。その雰囲気のままに、作者と「月」を共有したくなった。人生応援の一句。〈細川 不凍〉
老境の余白を映す絵ろうそく中嶋ひろむ
 人間の老いや人間そのものを深く見つめているようだ。「絵ろうそく」から映し出されるものとはいったい何であろうか。余白にこそ、人間の真実が隠されているのかも知れない。絵ろうそくという華やかさの下の老境の余白は、人間の光と影のようである。〈吉見 恵子〉
やがて冬 コタン小路の白い壁氈受  彰
 コタンはアイヌ語で村や集落の人の住む所をいう。作者の創作と想える「コタン小路」は、北海道のどこかに実在していても不思議ではないロマンのある素敵な呼称だ。「白い壁」は雪の壁のことだろう。ドカ雪が来ると小路はいっぺんに「白い壁」が立ちはだかることになる。人間生活を圧迫するのだ。美と酷が同居する句である。〈細川 不凍〉
生き抜く覚悟 汝の影のなか西条 眞紀
木枯らし一号 喪中一号 寒の劇岩渕比呂子
糸の月手繰れば消える杉の上越智ひろ子
十五夜やむかしがたりがほどかるる望月 幸子
捨て難き紙片一枚草書体松井 文子
かけがえのないものばかりルージュひく山下 華子
十三夜 芒が原に来てみればみとせりつ子
ティタイム大人の絵本適齢期富永 恵子
雪あかり翔べない鶴を折りつづけ林  勝義
オリオンも北斗も遠い夜の記憶小川 尚克
歳月の霧よりふいに青りんご吉見 恵子
2023.2.10

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