琳琅 No.180 2023年5月号より②
私がワタシを飲んで夕焼ける岩崎眞里子
 自分の中の自分との対話を通して獲得したモチーフを基に、表現者としての力量を遺憾無く発揮した連作七句。その中で最も興趣が湧いたのは掲出句で、能動的表現による詩的パフォーマンスが面白く、本来の「私」が異質な「ワタシ」を飲む場面はアニメを観る感じだ。軌道修正して、一日を静かに終えることの安堵感、その心地好さに浸る作者が見えてくる。〈細川 不凍〉
担任はアララギぼくの詩を褒めた小川 尚克
 詩を褒めてくれた先生との思い出を詠んでいるが、作者の詩を理解する担任の先生を「アララギ」と、徒名とも詩を理解する根拠とも言えるような言葉の採用は面白く、成功しているように感じた。〈吉見 恵子〉
追憶の淵 水の色風の彩氈受  彰
 追憶によくひたることがある。それぞれの過ぎ去った思いには、その人の五感によって、そのはたらきや趣も変わってくる。自分の色(彩)を持つということは、個人のパロールが具体化したもので、非常に大切なことである。ウクライナのような茶色の朝になってはいけないのである。誰かが決めた「一般的」な色に染まらず、自分の色を信じ発色し続けることの肯綮を再確認する。〈新井 笑葉〉
糸遊とたわむれせんと待つは母細川 不凍
春寒の鳥とわたしと風聖女越智ひろ子
俎の魚は星を辿っていた氷魚杉山 夕祈
口ごたえ許してしまう夢ならば福田 文音
早春のわが影までもうすみどり岡田 俊介
吹っきれぬものあり独り月と酌む山下 華子
執刀す烏賊海老浅利マッシュルーム松井 文子
存分に健康チェック冬木立野邊富優葉
春萌す からだの中は雪模様吉田  浪
言の葉を含んでゆっくり歩を進め富永 恵子
疎き明日抱いて寄り添う影法師林  勝義
2023.6.10

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