琳琅 No.181 2023年7月号より②
影踏みの影とどこまで世捨てびと西条 眞紀
 自分の現在地がどう変わろうと、子供の頃の楽しい思い出はいつも一緒だ。「世捨てびと」と自身を厳しく評したのは表現者としての矜恃にほかならない。哀愁を込めた表現の中に、内燃する作句エネルギーの発露を感取できたのが嬉しい。〈細川不凍〉
素貌なら僕によく似たアルルカン氈受  彰
 「アルルカン」とは、十六世紀のイタリアの即興喜劇の仮面を被った道化役者のことをいう。この句は、どこやら不安げな様相を漂わせている。「「素貌」が「僕」によく似ているアルルカンなら、僕がアルルカンでないとどうして言えよう。僕もまた、人間社会の中で、仮面を被って生きているアルルカンに違いない」と導いているようだ。直接的に、自分はアルルカンだと表現せず、逆に、素貌からアルルカンに着地させる工夫をしている。〈吉見恵子〉
墓石の苔のむすまで浪漫派古谷 恭一
 掌を合わす度に苔むす先祖代々の歴史を思う。遥かな時代それぞれに苦難があり又、それとは別にある種の歴史を生きた浪漫を感じる。合掌は守られている感謝の証。〈伊藤寿子〉
喉奥へ針射すリアルリアル今松井 文子
早飛脚の飛蝗(ばった)の鈴が鳴り止まぬ大谷晋一郎
右むけば左が寂し春の病か姫乃 彩愛
告白の葦(あし)牙(かび) 群青を抜ける伊藤 寿子
春の修羅 青き榠樝(かりん)の熟れるまで杉山 夕祈
真夜中の意識不明は神の域岩崎眞里子
春眠を跨ぐ雀の野良仕事野邊富優葉
君よ起きよ 水音清く風騒ぐみとせりつ子
草むしる背なの丸さよ妹よ小川 尚克
セピア色語り出す時ドラマ見る富永 恵子
生きなさいひとりの道に草若葉吉田  浪
2023.8.10

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